筋書きがあるのか、それともないのか。
ただ、あるにせよ、ないにせよ、息をするのも忘れるほど目の前の展開に引き込まれていく。
昭和8年8月 中等学校野球大会(現在の高校野球)延長25回
昭和33年 日本シリーズ 西鉄対巨人 西鉄3連敗からの4連勝 神様仏様稲尾様
昭和54年 日本シリーズ 近鉄対広島 9回裏ノーアウト満塁から広島江夏1点もやらず広島日本一
昭和63年 ロッテ対近鉄 ダブルヘッダー第2試合で延長戦の末 近鉄引き分け優勝逃がす いわゆる「10.19」
平成元年 近鉄対西武近鉄 近鉄ブライアント4打席連続ホームランで近鉄の優勝
平成10年 オリックス対ロッテ 16連敗中のロッテ黒木あと一人で連敗脱出というとこで同点本塁打を浴びる
平成13年 近鉄対オリックス 近鉄9回裏 5-3 から近鉄北川の逆転サヨナラ満塁ホームランで優勝決定
平成18年 CSハム対バンク 9回裏 0-0 内野安打でハムが1点奪取サヨナラ勝ち 斉藤和巳立ちあがれず
自分の知る限りはこんなところ、か。
まだまだここに書ききれないほどの名勝負はあるだろう。
1979年、昭和54年11月4日広島カープ対近鉄バファローズ 日本シリーズ第7戦 9回裏の攻防。
作家山際淳司がこの攻防を「江夏の21球」という文章に仕上げて世に発表した。
山際淳司が文章にしてNHKが映像にした「江夏の21球」、実に見応えがある。
投手江夏の心の動き、両指揮官の心の動き、グラウンドに立つ守備陣の心の動き、攻撃陣の心の動き。
一同が会して話すのではなく、各々が単独で話すが故に各人の理屈、正論があって面白いのである。
一同集まって話したら・・・面白さは半減するのかな・・・いや、それもまた面白いのかな。
広島、近鉄ともに3勝3敗で迎えた日本シリーズ第7戦、どちらが勝っても初の日本一という試合。
7回から登板した江夏は4対3広島僅か1点リードの展開で9回裏のマウンドに立つ。
この回を抑えれば日本一で試合終了・・・
気が緩んだわけではないだろうが先頭打者羽田にヒットを浴びて代走には俊足藤瀬が送られる。
次打者アーノルドはヒットエンドランのサインを見落とし藤瀬の単独盗塁という形になるが、
捕手水沼の2塁送球が悪送球となりセンターに抜けてしまう。
藤瀬は3塁まで進みノーアウト3塁という大ピンチを迎える。
そのあと2人の打者をフォアボールで歩かせてノーアウト満塁・・・絶対絶命。
2塁3塁になった時点で古葉監督はブルペンで池谷、北別府を準備させる。
チームの切り札を自負する江夏のプライドと試合全体をマネジメントす古葉監督のプランニングが交錯する。
投手と捕手がマウンドで2人になることはよくあるが、投手と1塁手が2人で話す場面は珍しい。
21球を語るうえで1つのターニングポイントとなる場面である。
ブルペンで控え投手が準備をしていることに腹をたてる守護神江夏。
憤慨する江夏に気付いてそれを諭す衣笠。
オマエがやめるならオレもやめてやる
そう言って衣笠が守備位置に戻る際に振り向きざまにニコッと笑ったという。
サチの歯はあんなに白くて綺麗だったんだ・・・
江夏は冷静さを取り戻していったという。
代打佐々木にはストライクを1球のみ投じボール球を振らせて三振に打ち取り1アウト満塁。
佐々木は2球目に投じられたストライクを見逃したことを甚く悔やんでいる。
次バッター石渡が打席に向かう前に西本監督は時間をかけて心構えを説いている。
みていて面白いと思ったのが言葉の解釈のしかた。
西本監督は石渡に「3球思い切って(初球から)打ちにいけ」と伝えているつもりが、
石渡は「スクイズのサインもありうる、それまでは打ちにいけ」と解釈している。
別におかしな解釈をしているわけではないが、監督のニュアンスと選手のニュアンスが微妙に違う。
ただ、この微々たる違いが結果になって表れたような気がする、あくまでも結果論だけど。
初球、ストレートならば石渡は打ちにいっただろうが、カーブだったので見送った。
その見送り方が江夏にも西本監督にも「あっさり」に映った。
江夏はスクイズを予感し、西本監督にスクイズを決心させた。
21球の象徴的な、カーブでウエストボールを投げてスクイズを外した場面。
石渡の見送り方がもう少し違ったなら・・・西本監督が打たすという方針を変えなければ、この場面はなかった。
江夏は「投球動作の最中に察知して意図的にカーブのままウエストした」という。
石渡は「偶然すっぽ抜けた球だ、カーブで外せるわけがない」という。
古葉監督は「ウチはシーズン中からこのプレーをやっていた」という。
偶然であろうと意図的であろうとボールは小さなカーブの起動で絶妙な位置に外され石渡のバットをすり抜け
水沼捕手のミットに納まった、ウエストのサインも出していないのに。
そして、3塁ランナー藤瀬は水沼にタッチされ2アウト。
その後石渡はファールを1球打ったあと江夏のカーブに空振り三振、3アウトでゲームセット。
この一連のプレーが原因なのか、石渡は翌シーズンより徐々に成績を落としレギュラーから外れていく。
結果的にではあるが、これが人生の転機になるプレーだった・・・人生の転機はどこにでもあるのか。。。
広島にとっては歓喜の瞬間、近鉄にとっては悲哀の瞬間。
江夏はこの9回裏に21球を投じた。
1イニングに21球も投げれば点を取られておかしくない球数だが、そこは語り継がれるドラマ。
1点もやらずに投げ終えた。
野球は・・・野球に限らず、スポーツ全般は人間がやる以上相手がいる以上、心理戦なんだ、と感じさせられた。
時を越えて語り継がれる試合とは、、、
プレーする選手たちが利害関係など何もかも忘れて、目の前のことに集中した結果なのかもしれない。
ほいじゃ、また







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